載せられなかったお話・その3:相続の仲介役

荒木棟梁 出入りの大工というのはものすごく信頼があるから、悪いようにはせえへんと。家のことはあいつに聞いたほうが早いんちゃうかというのがあるんでしょう。

相続の話に首をつっこんだこともあります。どの土地を誰にあげるのか、ちょっと相談してくれとか頼まれるわけです。それで「おまえしゃべれ」ということになったりしました。

そのご主人は実は大学の法律の先生だったりするのですが、「そんなん先生自分でやりいな」と言いましたら、「わしはなあ、人のことはできるけど、自分の家のことはできん」などと言われ、解決を図ったこともありました。

親戚みなが集まったところで、「相続はどうされますか」っちゅうのを聞くわけ。そしたら、みんななかなか当主に言いにくいことを私には言わはる。それを全部聞いて、ではこういうふうにしたらどうですかという案を出して渡すわけです。そうしたら、「もう荒木さんが言うんやったらいいわ、それにしよ」って。そんなこともありましたね。