載せられなかったお話・その1:玄関の鍵

『町家棟梁』の聞き取り作業では、たいへん興味深いお話をたくさんお聞きしましたが、紙面の都合で載せられなかったお話もあります。そのうち何点かをこのブログで紹介します。

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荒木棟梁 玄関というのは、基本的に外から鍵掛けることなく、中から掛けるだけやったんです。外出のときは、もしもどうしても親戚に不幸があって、家中みな出るというときには、裏木戸開けて、お隣の家から出るとかしました。なので、中からはかなり頑丈な鍵があるけど、外は全くなかった。

古い町家に行きますと、板閂(かんぬき)や落し猿(おとしざる)を閉めるとパタンと落ちて自然に鍵が掛かる。内側はかなり頑丈に閉まります。外からはどうやって開けるのかと思うかもしれませんが、本来外から開ける必要はないんです。

外から開けることはない。だから、家を空けることがないわけ、極端に。だから京都の場合は火事が少ない、空けるなら隣に言って裏木戸から通してもらう。

戸は閉まってるときは外れないんです。それで、ちょうどこの真ん中ぐらいまで持ってきたときに、ここでだけ外れる。アダ堀をしておくとそこで外れるようになります。その場所以外では、なんぼ気張っても外れません。