伝統的構法フォーラム(京都/東京)のご案内

先の講演会をお願いした後藤正美先生が注力しておられる「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験」検討委員会の報告会イベントが京都と東京であるようです。

もちろんEディフェンスの実大実験の報告がメインテーマになるのでしょう。

昨年の同委員会のキックオフ・シンポジウムは、熱気にあふれていました。今回は、まずは、足元をつながない、いわゆる石場建ての実験の結果についてどう述べられるか気になるところです。応募期間は2/21(月) 9時までで、応募者多数の場合、抽選とのことです。


  • 東日本大震災の影響で、京都・東京フォーラムとも中止となりました。

レクチャー報告:耐震要素としての土壁

2月12日、金沢工業大学の後藤正美先生による「耐震要素としての土壁」のレクチャーが行われました。たいへんわかりやすいご講演でした。

前半は、鳥取県西部地震新潟県中越地震などの先生ご自身がかかわった被害調査をもとにしたお話でした。

いっときは、「伝統構法は地震に弱い」というイメージがあり、国による解体費用の補助もあったことから、ハウスメーカーの現代的な工法のものに一気に建て替えが進みました。が、必ずしも、伝統構法は構造的に弱いわけではない、ということです。

確かに被害のある伝統木造もありましたが、まったく壊れていないものもある。壊れているという意味では、現代的な工法のものも壊れている。さて、その差はどこにあるのかというと、構法の違いというよりも、「地盤の悪さ」「不適切な改修」「蟻害による部材の腐朽」のほうが大きいということです。

伝統建築の被害で、柱が折れている事例があったそうですが、よくみると、折れた上部の小壁が構造用合板に取り換えられてある。そういう不適切な改修がすでになされたところであり、その「かたい」部分と「やわらかい」部分の境目のとこに被害が出たそうです。

建物の特性を知る場合に、「復元力特性」という見方があります。すなわち、1.剛性(固さ)、2.耐力(強さ)、3.変形性能(ねばり強さ)、の3つだそうですが、現代的建築は、先の1「剛性」と2「耐力」で見ますが、伝統木造については、加えて3「変形性能(ねばり強さ)」をいかに評価するかが、ポイントだということです。筋かいや金物は破断すればゼロなのです。ねばり強さというものが、いわゆる限界耐力計算の要のようです。

あともうひとつ重要なことは、適度なバランスということです。部分的に固くしたり、重くしたりせず、構造と重量のバランスをうまくとるべきとのことでした。先の被害例も部分的に固くしたところでした。面白い例では、構造補強の提案として、2階の壁を減らすという提案もされているそうです。考え方の違う構造物では、発想の転換が必要そうです。

参加者の声

  • 現行の告示に関する批判(同感です)もあり、伝統の場合には柱脚固定、金物の使用はよくないという思い切った見解も聞けて大変興味深かったです。特に粘性土を扱う土壁の技術に一定の仕様を確認することの難しさを思っています。
  • 大変勉強になりました。早く実務へフィードバックされるように期待しています。現実問題として、私がやっているものは改修物件が多いので、実情に合ったところの検証を願いたいです。
  • 土壁についての知識は全くなかったので、今日の講演会について行けるか心配でしたが、とてもわかりやすく、土壁に対する興味が大変深くなりました。伝統構法は「やわらかい」構造であり、「かたく」することだけが耐震につながるわけではないということを初めて知ることができました。大変勉強になりました。ありがとうございました。

講師ご紹介:後藤正美先生

第3回 耐震要素としての土壁の講師のご紹介です。

後藤正美先生は、金沢工業大学建築学科卒業、京都工芸繊維大学工芸学研究科修士課程(建築学)修了後、1983年より金沢工業大学で教鞭をとっておられます。ご専門は、木構造/耐震工学です。

当初より木造を専門とされている建築の方は、実は数少なく、ほとんどの方が1995年の阪神・淡路大震災以降にかかわられているのですが、その意味では、生え抜きの研究者の方です。秋田県立大学名誉教授の鈴木有(たもつ)先生が、金沢工業大学におられた頃に、いろいろと勉強させてもらったとのことです。

先生のひととなりは、以下の紹介記事でも読めます。

ご専門は木構造ですが、民家・町家の総合的な耐力としては、軸組とともに土壁は大変重要でありますので、今回は「耐震要素としての土壁」のご講演をお願いしました。伝統構法のねばりを評価するには、軸組の仕口のはたらきとともに、土壁のもつ柔軟性にも着目しなければなりません。そのあたりをきちんと理解し、伝統建築の今後につなげていく必要があると思っています。

また、現在、国土交通省の3か年プロジェクトである「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験 検討委員会」の実験検証部会の主査も務められています。実際の民家を大きな振動台で揺らしてみてその壊れ具合を検証するとともに、実験データを取りまとめ、実際の改修/新築でも使えるような設計基準をつくるという壮大なプロジェクトの実行責任者のおひとりでもあります。三木市Eディフェンスで行われた実大実験の様子についてはすでに公式サイトにて公開されているようです。

2/12のレクチャーでは、先の1月20日ごろに実験の様子のビデオを見せていただきながら、簡単に要点を解説していただく予定です。

伝統構法の勉強会をやっています

昨年秋より、自分も実行委員のひとりとして加わりながら、伝統構法のイベントを会社の3階でおこなっています。ちなみに実行委員のもうお一方は、京町家作事組の理事で、建築家の末川協さんです。

自らのことで恐縮ですが、伝統建築に興味を持ったのは『’¬‰ÆÄ¶‚Ì‹Z‚Æ’mŒb』に関わったことがそもそものきっかけです。木造の構造に関しては、門外漢もいいところですが、『“`“\–@‚𐶂©‚· –Ø‘¢‘ϐkÝŒvƒ}ƒjƒ ƒAƒ‹』を担当したことで、いろいろと広がりを得ました。

このコミュニティの方々にいろいろとご縁をいただきまして、仕事がつながっている部分もありますので、このブログではすこしでもお役に立てるように情報を発信し、つなげることを目的としたいとかんがえています。

今回は、関西でのイベントとなりますが、ご興味がありましたら、ご参加ください。

連続レクチャー伝統構法を学ぶ